「前から聞きたかんただけど」
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「あん? 味の秘訣か?」
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「オヤジの店の料理ってさ、ウルトラ不味いじゃん?」
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「いきなり言葉の暴力かよ!?」
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「誹謗中傷を言ったみたいな扱いはやめてくれって。客観的事実を口にしただけだよ」
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「れ、冷静にトドメを刺しにきたじゃない」
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「で、俺の店の個性的な味がどうしたんだ」
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「このマズさを踏まえたうえで、メニュー表を見ると疑問が湧いてくるんだよ」
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「疑問って、何が」
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「例えば、この『サンライズ担々麺』一つとっても、120円っておかしいだろ」
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「料理の値段がさ、全体的に安すぎじゃね?」
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「お、おいおい、それはもしかして……」
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「勘違いするなよ。オヤジの料理がそれだけ価値があるって話じゃないぞ」
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「味だけで考えればさ、0円でもヤバいだろ」
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「ちっくしょう!」
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「俺が言いたいのは材料費の話だよ」
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「100円の『サンクチュアリ・チャーハン』にしてもさ、米風なものとか、卵風なものとか使ってんだろ?」
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「風ってなんだよ……キチンと米も卵も一級品を使ってるぜ?」
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「じゃあ、なんでこの値段なんだよ」
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「そりゃ、あれだよ。一人でも多くの人に食べて欲しくての値段設定だ」
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「薄利多売どころか、完全に赤字だろ?」
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「いいんだよ。趣味でやってる店だから、採算は最初から考えてねえよ」
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「それにしても度が過ぎるって」
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「あん? 安いにこしたことないだろ?」
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「はぁ、それも限度があるだろうに。
なんだよ、この『エンジェル餃子』一皿10円って」 | |
「へへっ、自慢の一品だからな、完全ご奉仕価格だぜ」
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「完っ全に裏目に出てるからな、それ」
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「ど、どういうことだ!?」
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「安いを通り越して怪しいんだよ」
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「普通の感覚を持ってる人間なら、真っ当な材料を使ってないって誤解するからな、この値段」
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「それじゃあつまり、安過ぎて逆に不安感を客に与えてたってことか?」
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「この値段とメニューの名前で警戒しないのは、生まれたての赤ん坊くらいだよ」
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「な、なんてこった、パンナコッタ」
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「まあ、あの味で他店と同じ価格帯はアウトだし、多少の割安感は必須だろうけどさ」
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「目からウロコだぜ……って、ちょっと待てよ!?」
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「つまりだ、この値段を適正な価格に見直せば、客も沢山来てくれ――」
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「いや、それはない」
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「ちっくしょう!!」
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異常なまでの安さですが、それでも価格に見合ってはいません。
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