第16回 『オヤッサンの店の料理の値段は? 不味いうえに高いの?』

「前から聞きたかんただけど」
「あん? 味の秘訣か?」
「オヤジの店の料理ってさ、ウルトラ不味いじゃん?」
「いきなり言葉の暴力かよ!?」
「誹謗中傷を言ったみたいな扱いはやめてくれって。客観的事実を口にしただけだよ」
「れ、冷静にトドメを刺しにきたじゃない」
「で、俺の店の個性的な味がどうしたんだ」
「このマズさを踏まえたうえで、メニュー表を見ると疑問が湧いてくるんだよ」
「疑問って、何が」
「例えば、この『サンライズ担々麺』一つとっても、120円っておかしいだろ」
「料理の値段がさ、全体的に安すぎじゃね?」
「お、おいおい、それはもしかして……」
「勘違いするなよ。オヤジの料理がそれだけ価値があるって話じゃないぞ」
「味だけで考えればさ、0円でもヤバいだろ」
「ちっくしょう!」
「俺が言いたいのは材料費の話だよ」
「100円の『サンクチュアリ・チャーハン』にしてもさ、米風なものとか、卵風なものとか使ってんだろ?」
「風ってなんだよ……キチンと米も卵も一級品を使ってるぜ?」
「じゃあ、なんでこの値段なんだよ」
「そりゃ、あれだよ。一人でも多くの人に食べて欲しくての値段設定だ」
「薄利多売どころか、完全に赤字だろ?」
「いいんだよ。趣味でやってる店だから、採算は最初から考えてねえよ」
「それにしても度が過ぎるって」
「あん? 安いにこしたことないだろ?」
「はぁ、それも限度があるだろうに。
なんだよ、この『エンジェル餃子』一皿10円って」
「へへっ、自慢の一品だからな、完全ご奉仕価格だぜ」
「完っ全に裏目に出てるからな、それ」
「ど、どういうことだ!?」
「安いを通り越して怪しいんだよ」
「普通の感覚を持ってる人間なら、真っ当な材料を使ってないって誤解するからな、この値段」
「それじゃあつまり、安過ぎて逆に不安感を客に与えてたってことか?」
「この値段とメニューの名前で警戒しないのは、生まれたての赤ん坊くらいだよ」
「な、なんてこった、パンナコッタ」
「まあ、あの味で他店と同じ価格帯はアウトだし、多少の割安感は必須だろうけどさ」
「目からウロコだぜ……って、ちょっと待てよ!?」
「つまりだ、この値段を適正な価格に見直せば、客も沢山来てくれ――」
「いや、それはない」
「ちっくしょう!!」
異常なまでの安さですが、それでも価格に見合ってはいません。

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