第21回 『外伝「Remember the palm」プロローグ 男三人編』

はぁ……オヤジさぁ、本人がいないところで、高校生のプライベートを漏らしていいのか?
もしかして、マズかったか?
最高でしょ!
へへっ、だろう?
やれやれ、大人げない人たちですね。
はん。ちゃっかりと、会話に参加してるヤツに言われたくないね。
いやぁ、手厳しい。ですが、これも立派な仕事のつもりですよ?
情報部としては、勇さんの情報は価値が高いですからね。
ロクよ、そんなに固く構えるんじゃねえよ。
単純に、身近な年長者としてジュニアで楽し、じゃなくて、ジュニアの力になれないかって話だ。
ふむ……力に、ですか。
であれば、私は力になれなさそうですがね。
何でよ。
勇さんの問題点は、仕事とプライベートで同じ服を着回すということなんですよね?
だな。
私も似たようなものですから。お二人は私のスーツ以外の姿を見たことは。
お前さんが若い頃はまだしも、スーツを着用するようになってからは……無ぇな。
えっ、リーマン、プライベートでもスーツなの?
自宅や道場などではさすがに、ですが外出する時は大体そうですね。
ですので、勇さんにアドバイスするとしても、おすすめのスーツ生地くらいですよ?
それは、役に立たなさそうだ。
シャレたスーツならまだしも、ロクのはザ・ビジネスって感じだからな。
えぇ、ですから、この相談内容なら鈴鳴さんと久利さんが適任かと思いますよ。
うーん、オレたちも、相談にのるのは無理だと思うけどな。
何でだ?
オレのファンションはさ、マロンちゃんにどう見られるかだけが重要なわけさ。
マロンちゃんも同じで、オレの好みかどうかで服を選んでるらしいし……可愛いぜ、マロンちゃん。
お、おう、そうか。
つまり、大多数が好む服だったり、高校生に似合う服っていうのを上手く選べるかは未知数ってことだ。
でもよ、お前らのアクセサリーブランドは結構な人気なんだろ?
芸能とかファッションの関係者にもファンがいるって聞いたぜ。
って話だな。オレやマロンちゃんが直接会うことはないけど。
それだけ周囲の人間に理解されるものを作れるのなら、客観的なセンスを持っているのでは?
いやぁ、それがさ、アクセサリーもまったく同じ理屈なんだよな。
ただマロンちゃんが身に付けるのに、ふさわしいアクセサリーを。
それがオレの創作意欲の原点だ。
で、久利も似たようなモチベーションで作っている、と。
ああ。最高に可愛いんだぜ、オレのことを思ってデザインをするマロンちゃんはさ。
お、おう。それでよく、そこまで世間に受け入れられてるな。
単純にお二人とも、美的感覚が鋭いということなんですかね。
何故だか、素直に認めたくはねぇがな。
まあさ、分からなくもないんだ。
何がよ。
マロンちゃんは、美の化身のような存在だろ?そんなマロンちゃんに似合うように作ろうものならさ――
こうなったコイツは手のつけようがないから放っておくとして、ロクよ。
なんです?
お前のアドバイスは難しいとしても、アカネはどうなのよ。
アカネさんですか?
お年ごろの娘さんの意見だろ?しかも、独特とはいえ美的センスもありそうだしな。
動物と赤ちゃんは、可愛い映像として最強って話があるだろ? でも、それは世の中が、ある存在を知らないだけだと思う――
相談自体は喜んで対応すると思いますよ。アカネさんは、創作物などでも恋愛話を好みますからね。
ですが、ふむ……
何か問題でもあるのかい?
いえ、そういうことなら、アカネさんに聞いてみましょうかね。
まあ、どんな意見でも参考にするかどうかは、ジュニア次第だけどな。
そういう前提があるのならば、彼女も気が楽でしょう。
前から思ってたんだけど、そろそろ辞書の「美しい」の項目にさ、マロンという女性を指し示す言葉って記載すべきだと――

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